「初めまして、いつもシリーンがお世話になっているようで・・お目にかかれて光栄ですライザール王」

 

店主はそう言いながら案内してきた男を手で追い払う。

 

一つ舌打ちした男は無言のまま私を睨むとさっさと退出した。

どうやら確実に嫌われているようだ。

 

「すみませんねえ。礼儀も知らない子で・・一度宮殿に行儀作法がてら送り込んだのですが、その節はご迷惑をおかけしたようで

・・ははは、お恥ずかしい」

 

あの襲撃をその程度で言えるのならばそうとう神経の図太い男だった。

 

仮にも一国の王にあだなしておきながら、笑い飛ばすとは

・・非常識としかいいようがない。

 

シリーンとの取引があったからこそ大ごとにはあえてしなかったがあれはまぎれもなく暗殺未遂に他ならなかった。

 

「シリーンとの約束だから不問に処すが、二度はないと思え」

 

実行犯を野放しにするとは我ながら甘くなったものだ。

だがシリーンはあの男を大切にしているようだった。

 

いつかの折、奴について聞いてみたがシリーンは奴の正体に気づいていないようだった。

 

彼女と同じ密偵仲間だという認識なのだと知り、私は呆然としてしまった。

 

それだけあの男が気取られないように気を使っているのだろう。

だから私もあえて指摘することはやめた。

 

もしあの男の正体を知ればシリーンは悲しむだろうから。

 

私の言葉に店主は神妙に頷くと言葉を続けた。

 

「寛大なお言葉恐れ入ります。シリーンから聞き及んでいると思いますが私は不治の病でね。どんどん老化してしまうのです。だからこそ不老長寿になれる秘薬が必要なのですが・・それには貴方の血が最適なのです。シリーンが心から愛する男の血がね・・」

 

 

まさに胡散臭い話としか言いようがなかった。