エピソード2

 

まだ独身だった頃忙しい身の私がたまの息抜きに水煙草をふかしながら自室で寛ぐことがあった。

 

もちろん彼女の妊娠が判明する前の話だ。結婚は生活習慣すら変えるものだからな。

 

当時は彼女が現れぬものかと願いながら彼女のことを考える習慣になっていた。

 

まさか自分が恋煩いというものを体験するとは思いもしなかった。

案外悪くないものだ。

 

私とシリーンの関係は彼女が私の血を欲し、代わりに己の肉体を差し出したことから始まる。

 

それにしても考えてみれば明らかに彼女の方が損な取引だった。

 

互いに警戒は怠らなかったが、シリーンは抱き心地の良い女だったし頭もよく興味の尽きない女でもあった。

 

王であり舌鋒鋭い私と彼女との会話は多岐にわたった。

 

この国では賢しい女は疎まれる風潮が根強く残っていたが、私は好ましいと思う。

 

あれほどの美貌を他人の為に使い身を削った人助けも厭わないとはまさに稀有な存在と言えた。

 

だからかいつしか彼女の来訪を心待ちにするようになってしまった。

 

それは月に数回でしかなかったが、私と会わない時彼女は誰と過ごしているのだろうか?

 

別に互いに干渉しないと取り決めたわけではなかったしルール違反にはならないだろう。

 

はぐらかすかと思ったが彼女の答えは・・・

 

「いないわ・・・って言ったら信じるの?・・・いないわ、本当よ」

 

やはり食えない女だが私に操だてしてるのは確かだ。

 

抱けばわかる。

 

それに彼女も常に完璧だったわけではない。あらゆる意味で私の前では素に近い自然体だったと思う。

 

でなければ続かなかったはずだ。

 

一度だけ彼女に同じ質問を返されたことがある。嫉妬ではなく好奇心からだったがな。

 

この場合は嘘をつくのが定石なのだろうが、本当にいなかったから正直に答えた。

 

小さな嘘でも積み重なれば信用は失墜するものだ。