私もだが恐らく彼女も自分の変化に気づき戸惑っていたのだろう。

答えを求めていたのだと思う。それ以上は何も言わなかったがその目が訴えていた。

 

貴方はどうなの?・・・と

 

密偵であることを誇りに思っていたシリーンに言うべきか迷った末私は彼女に求婚した。男としてけじめをつけたかったからだ。

 

「シリーン・・私と結婚して欲しい」

 

「突然なに?・・どうしてそんなこと・・・バカ言わないで無理に決まってるでしょ!」

 

だが彼女は激怒した。

 

感情をあらわにした彼女を見たのは初めてだった。

 

彼女の涙を見たのも・・・

 

私は己の失敗を悟った。シリーンは葛藤していたが、最悪なタイミングで求婚してしまったようだ。

 

初めて妻にしたいと思える女に出会ったというのに・・

 

しかも彼女は私の子を身ごもっていた。

だから家族になりたいと望んだ。

 

だが選択肢のない人生をがむしゃらに歩んできた彼女にとっては本能的な拒絶感があったのだろう。

 

他人のために尽くし常に自分を後回しにしてきた彼女がはたして己の幸せについて真剣に考えたことがあったのだろうか?

 

それに平民同士の結婚ならばいざ知らず、王の私に嫁ぐということは王妃になり世継ぎを産まねばならない運命だった。

 

まさに噓から出た実だ。

 

店主のための血を得るため私に抱かれてきた彼女が、いつしかただ私に抱かれることを望むようになった時恐らく互いに愛が芽生えた。

 

理性がいくら拒んでも女としての本能で私を求め、熱くなりすぎて避妊薬の服用をやめたシリーンは身ごもってしまったが、私の求愛で彼女は夢から覚めてしまった。

 

そして現実を知り恐怖を感じたのだろう。

よかれと思ってしたことが彼女をかえって追い詰めてしまったのだ。

 

シリーンは去ってしまい、私は一人取り残されてしまった。

 

シリーンを思うならば、生むにせよ生まないにせよシリーンの判断に委ねるべきだった。