幼子をなだめるように髪を撫でてやると力をぬいたシリーンが身を預けてきた。

 

互いの鼓動が重なり合う。

 

私の心臓の音が聞こえるか?シリーン・・愛している

 

「ルト・・・今度こそ私を離さないで」

 

 

囁くようなシリーンの言葉に激情に駆られそうになる。

 

「ああ・・もちろんだ・・・シリーン」

 

「なら・・今すぐ貴方だけの女にして」

 

 

私達は互いを欲していた。処女ではなくなった分、シリーンは私に応じる覚悟はすでにできているようだった。

 

なら遠慮はしない私だって男だ。

 

「シリーン愛している」

 

愛を誓った私は彼女をそっと寝台に押し倒す。

視界に鎖が入ったが、今の私には必要のないものだった。

 

なぜなら私はシリーンを愛することで心を縛っていた鎖から解放されたのだから。

 

頬に手を添えたままキスを交わし、首筋や鎖骨にも唇を落とす。

 

シリーンの素肌にはすでにヘナ・タトゥーはなかった。

私を誘惑するのにもはや必要ないからだろう。彼女も密偵であるよりも女でいたいと思ったのかもしれない。

 

悪夢の中で彼女はヘナ・タトゥーのせいで正気を失ったジェミルと過ちを犯したことを嘆いていた。だからこそ安堵してしまう。

 

すっきりとしたデコルテに口づけてはじっくりと吸い、私の愛の印をつけていく。

 

どれだけジェミルが鈍くても気づくだろう。

 

シリーンは優しい女だからいざとなったらジェミルに別れを告げられないかもしれない。

 

だが彼女は私を選んだ。私の女である以上、他の男が彼女に触れることは許せなかった。

 

甘い彼女の嬌声が耳に心地よい。

 

かきわけた先にあった豊かな神秘の泉が私の渇きを癒してくれた。

 

潤いを与えてくれる女神には敬意を払わねば。

 

初めて抱いた彼女は本当に素晴らしかった。

まだ不慣れな分初々しいしぐさに愛しさが募る。

 

私の情熱で過去の男など払しょくしてやろう・・・

 

感極まる様子の彼女を抱きながら私自身かつてないほど高ぶっていた。

 

愛しい女と求めあい愛を交わすことがこれほど心と体を満たしてくれるとは思わなかった。

 

「私はお前だけの男だ。存分に味わうがいい」

 

女に操立てしたことなどかつてなかったが、シリーンにならば捧げてもよい。

 

私だって彼女をジェミルだろうが他の男だろうが渡したくないのだからお互い様だった。

 

「本当?・・ふふ嬉しいわ」

 

私の言葉により感度があがってしまったのかさらに乱れるシリーンの姿を愛でる。

 

私が傷つけてしまったシリーンは女としての喜びを取り戻してくれたようだ。

 

こうして私たちは飽くことなく互いを求めあったのだった。