「だって・・貴女は愛ではなく野心をとられると思ったのよ。私みたいな女では貴族はもちろん国民だって納得しないでしょう?貴方のためにならないわ」

 

私の中では通った理屈だったし、妥当な判断に思えた。

 

「ふっ・・・随分見くびられたものだな。私を誰だと思っている?真の王なら野心も愛も両方手に入れるものだ」

 

――え?

 

野心も愛も・・両方?

 

「レイラが逃げたことは聞き及んでいる。アリ家は私に借りがあるからな。だからお前をレイラに代わって養女に受け入れることを了承させた。そのうえで私に嫁いでもらう。お前の主である店主にはこれからも血を与える代わりに協力させた。・・あとはお前の気持ち次第だ。」

 

――私の気持ちを確かめたいとおっしゃるのね

 

狩りの達人なだけにまるで獲物みたいに囲い込まれ追い込まれた状況なのに・・

 

最後の逃げ道は用意してくださるなんて・・・

 

「・・私の子はお前に産んで欲しい・・家族になってくれないか、シリーン」

 

――っ

 

しかもずるいわ!応える前にそんなこと・・私が貴方の子を?

そんな・・そんなことっ・・・これまで一度も・・

 

一度も考えなかったわけじゃない。

 

この国の結婚適齢期から言えば私の年で結婚していない女の方が珍しいもの。

 

仕事があるから家庭に入る気はあまりなかったし、密偵だからとか相手がいないからとかいろいろ理屈は並べても女ですもの、

 

もちろん考えたことはあったわ。

でもそれはそれ。

 

愛する方から子を産んで欲しいなんて言われる日が来るなんて思わなかった。