町はヴィンス王の即位一周年で賑わっているけれど興味を示さない私に呆れたのか女の勘で察したのか宿のおかみさんに勧められて遅い昼食をとってからやってきたのはイベリスの丘だった。
抜けるような空の色、風も心地よくてシャナーサでは見ない色とりどりの小さな花が咲き乱れたイベリスの丘の見晴らしは本当に素晴らしかった。
きっと一人で見るものじゃないわね・・
ライザール様とご一緒したかったとふと思ってしまった。
灼熱の砂漠のように熱い魂を持った彼に会いたかった。
いつになく感傷的なのは私がそれほど本気だったから。
でも私みたいな密偵の女の愛なんて迷惑でしょう?
私の愛で癒してあげたいと思ったのは本当だけれど、結婚なんて無理よ・・
これでも貞操観念はあるのよ?ライザール様に抱かれて以降、
私は他の誰とも寝てないし。
だけど奔放に過ごした過去は消せないでしょう?
せいぜい愛人どまりの女よね。
ライザール様だって数々の経験はしてるでしょうけど・・
でも男と女は違うから・
・・とくに厳格な身分差のあるシャナーサではね
それにライザール様だってもともと野心のために感情を犠牲にする覚悟があったはず。
それが放っておけなくてほだされて心を与えてしまったのがいけなかったのね。
野心の足しにもならない愛を選んだ彼を、でも嫌いにはなれなかった。
・・・嬉しかったの、とても。
私みたいな女を愛してくださるなんて・・信じられなかった。
一度も気持ちを伝えなかったのに
・・愛を返していただけるなんて・・
弄ばれて捨てられたって文句はいえない身だからよりそう思うわ。