暗殺未遂事件が無事解決して、浮足立った宮中もいつも通りになった。

 

少しの不穏と策謀は日常茶飯事よ。

 

実行犯のジェミルは結局行方知れずのままだったが、もう二度と会うことはないだろう。

 

事件解決を見届けたヴィンス王も無事帰国されることになった。

 

だから私は出立を見送られるライザール様に同伴させていただき、お貸しいただいたダガーをヴィンス王にお返しした。

 

「お力添えを頂きありがとうございました。このダガーがあったからライザール様をお守りすることができました」

 

そのダガーがあったからジェミルに揺さぶりをかけることができたんですもの。

 

でも私の話を聞いた途端、ルーガンの王らしく不遜で寡黙なヴィンス王が破顔されたから驚いたわ。

 

あんな顔もなさる方なのね。少しだけ印象が柔らかくなって親しみがもてたけど・・

 

「ははは・・なるほど・・狩りの女神ではなくピュセルだったとはな。お見それした。俺の手に負える女じゃない・・貴女はルーガンの地には来ない方がいい。攫ってしまいたいが火刑にするにはまったく惜しい女性だ」

 

!?

 

不穏な言葉に思わず顔が強張ってしまう。とはいえヴィンス王の言葉に棘はなくて悪気はないらしくまるで誘惑するかのように熱いまなざしを注いだまま私の手を取り恭しく口づけたのには驚いたわ。

 

ルーガン流の貴婦人への挨拶だけに訳知り顔のライザール様は平然としてらしたけれど内心穏やかじゃなかったかもしれないわ。

 

意外と大人げないところがある方だから。