――!

 

なぜ隠してもわかってしまうのかしら。行動心理を読み解くライザール様には恐れ入るばかりだった。

 

「ええ・・・その通りです。貴方の様子がおかしくなって、状況からジェミルが毒を使ったのだと判断しました。

 

ならば必ず解毒薬も持っていると思い彼に従うふりをしたのですわ。

 

・・ジェミルは私を忘れないでいたから勝算はありました。彼が暗殺者だったことがショックだったのに、そんな風に利用できるかできないか考えてしまえる女なんです、幻滅なさったでしょう?」

 

愛は確かに私の中にあるけれど、その愛を守るためならばどこまでも非情になれる・・それが私の本性だった。

 

「いや・・・むしろ惚れ直したくらいだ。従順だが愚鈍な女ではないからこそお前をどう扱うか私も考えた。私にはもったいない女だ。

 

だがだからこそお前を手放したくないと思う。お前も聞き及んでいるだろうが、過去に幾度なく私は命を狙われた。

 

だが今思えば私に見る目がなかったのだろう。偽りの愛を信じて裏切られたこともあったし、真実の愛を疑い受けいれずに愛想をつかされたこともあったと思う。

 

寝台の天井から下がる鎖は己への戒めのためだ。私を傷つけ、私が傷つけた女達がいたことを忘れないための・・な。

 

・・だが私はお前に出会って初めて己の愚かさを呪った。信じたくてもつい疑ってしまう。だがそれは真実私を愛してくれているお前を信じないのではなく、私がそういう性分だからだ。

 

だがそれは甘えに過ぎない。私はお前の愛を失いたくないし、愛想をつかされたくない。こんな男ですまない・・・シリーン。

 

それにお前は冷たい女なんかじゃない、それは私が保証する。あの暗殺者のことだって案じるお前の優しさを理解したいと思う。

 

だが葛藤はあってもお前は私を選んでくれただろう?・・・嬉しかった。私はお前の愛だけは信じようと決めた。・・・だからお前も私を信じて欲しい。何があろうとお前を切り捨てたりしないと誓う。

 

お前は私の半身なのだから」

 

!!

 

――ライザール様!私を半身と言ってくださるなんて・・

 

なによりも心の内を明かしてくれたことが嬉しかった。

 

彼が愛した女達がいたことにかすかに胸が痛んだけれど、人を愛さないよりかはずっといいしトラウマを乗り越え彼はまた女性を、・・・私を愛そうとしてくれているのだということが嬉しかった。

 

蕾のように強張っていた気持ちが綻んで花開く予感に心が震える。

 

 

でもしんみりって柄じゃないからウィットで返すのも悪くないでしょ?