ヴィンス王のダガーで私を処罰などできるわけもなかったし、ライザール様がその気にさえなれば私など素手で十分だったでしょうけど、彼は殺気をひっこめてくれた。

 

「ああ・・もちろんだ。・・怪我をしてるな・・痛むか?」

 

私の首筋にはジェミルを脅すために自分でつけた傷跡が残っていた。

 

「・・・少し。でも大丈夫ですわ、丈夫なのが取りえですもの」

 

どういう状況でついた傷跡なのかライザール様は気にされたようだけれど、説明は難しいわね。だって彼の好む従順な女はあんな無謀なことしないでしょうから。

 

「あの男はお前に執着しているようだったし傷つけるわけはないと思ったんだがな・・・お前を連れ去ったのに奴は解放したのか。・・

 

私自身あの男から受けた傷跡はたいしたことなかったのに後れを取ってしまったのだったな。状況から考えると毒を使ったのだろう。

 

そういえばあの時口移しでなにか飲まされたような・・あれはお前の仕業だろう?」

 

朦朧としながら状況を把握していたなんて驚きだったが、彼の推察はあたっていた。

 

「ええ、ジェミルから手に入れた解毒薬を口移しで貴方に飲ませました。いざとなったら私だってお供する覚悟でした」

 

毒なのか解毒薬なのかわからないものを飲ませる以上、リスクを共有したかった。

 

「なるほど・・状況から考えるにおそらくだがお前はこのダガーを自分に使い奴を脅して解毒薬を手に入れたのではないか?

 

あの時私は意識がなかったが、キスしたのがお前でなければ抵抗しただろう」