けれどそこで状況は一変してしまった。
ライザール様の体が急に力を失ったかと思ったらもたれかかってきたからだ。
普段どちらかというと体温が低い身体は汗ばみ燃えるように熱かった。
――まさか!?
ライザール様が負った傷は上腕だけだった。致命傷でこそなかったが、おそらく刃になんらかの遅効性の毒物が仕込まれていたのだろう。
「ライザール様!しっかりして!!」
頽れた彼を抱きかかえそっと横たえて、処置をしようとした私の腕をジェミルが引いて無理やり立ち上がらせた。
「一緒に来い!!」
どうやら未練からこのまま私を連れ去る気のようだ。
「やめて!離して!!」
抵抗を試みても彼の腕は強く振りほどくことはできそうになかった。
ライザール様の処置をすぐにしなければならないのに・・助けを求めるように手を伸ばしたら、意識を取り戻したライザール様が私の腕を掴んだ。
男二人に腕を引っ張られた状況に混乱をきたしてしまう。
――ああ、一体どうしたらいいの?
「シリーン・・・・・・・愛している」
!
それだけを伝えたかったとばかりに先に力尽きたのはライザール様の方だった。
彼の手が力を失い私の手がするりとすべるように彼の手から離れてしまう。
それでもライザール様は私を見ていた。その熱い眼差しに心が熱くなってしまう。
愛があるからこそ手放してくれたのだとわかってしまったから
ジェミルが私を害することはないと判断されたのだろう。
強引に連れ去ろうとするジェミルから感じるのは幼い執着だけだった。