昼間私の狩りの腕前を披露したことで信頼を得たのか、ヴィンス王は腰に差してあったダガーを渡してくれた。

 

小ぶりな剣は私の手にも馴染むし扱いやすそうだったが、見るとナイフはルーガンの紋章入りだった。

 

「こんな大切なものを・・必ずお返しいたしますから」

 

思わず身が引き締まる。おいそれとは扱えない代物だった。万が一紛失したり悪用されたら国交に差し障るのは間違いなかった。

 

「ふん、その価値や重みがわかるか。やはり面白い女だなお前は。・・気をつけるがいい暗殺者は女と見まごう者だったがあれは恐らく手練れの男だ」

 

ヴィンス王の言葉に先ほどの暗殺者の姿が浮かぶ。間違いない同じ男だ。

 

「はい・・・ヴィンス王もお気をつけて」

 

ヴィンス王と別れた私はカマルの先導でライザール様の元へと向かった。

 

ヴィンス王は私が武器を扱えると思っていたみたいだけど、それは違う。

 

確かにレイラ様をお守りするために最低限の訓練は受けたけれど、それでも本職の暗殺者をどうにかできるレベルではなかった。

 

それでももし私の考えが正しいならば・・あの男は私がシリーンと知り、刃を引っ込めたのだとすれば・・私次第で交渉は可能だった。

 

ライザール様の愛用の鞭は遠距離攻撃には強そうだけど接近戦には弱いかもしれない。もちろん武器を持たなくても体術を習得されているだろうけど。

 

暗殺者の男の持つ暗器は接近産戦向きだったが投げて使うことも可能だろう。

 

カルゥーもいるからさらに翻弄できるはずだった。