肌の手入れを終えた後、レイラ様からいただいた新色のマニキュアも試してみた。

 

口紅と同じコーラルレッドの色味が鮮やかに整った爪に映えて気分があがる。

 

靴を履けば見えないんだけど見えないところのおしゃれにも気を使いたいから足にもペディキュアを施していたら遠巻きに寛いでいた女達の愚痴が聞こえた。

 

むかっせっかくおしゃれしてたのに~ここの男共見る目ないわ~最悪むかっ

 

むかっ王様とかいっても面倒な奴ばかりだし~相手にもされないってどうなのよむかっ

 

むかっ近づこうとしたらあの黒猫に食われかけたのよ?信じらんな~いむかっ

 

あらら。どうやらお二方には冷たくあしらわれてしまったみたいだけど・・

 

私に聞かせるためにわざと言ってるわけじゃないわよね?

 

まあライザール様は私とご一緒だったし関係ないけど。

 

モテる方達だけに気苦労も多いのかしら。

 

男性だから下心があるのだろうとなんとなく思っていたけれど人によるのだろか?

 

少なくとも私自身は興味のない相手にちやほやされたいとは思わないわね。

 

限られた時間を有意義に使うには放っておいてほしいと思うかもしれない。

 

そう思えば少しだけ気の毒な気もした。

 

温泉

 

昨夜は噴水で身を清めたけど、やはり湯に浸かると疲れが取れてさっぱりできた。

 

侍女が用意した衣装を着て湯で火照った素肌に香水を一吹きして身支度を整える。

 

「誘っていただけてありがとうございます、レイラ様」

 

改めて礼を言うと、レイラ様はシニカルな笑みを見せた。

彼女の中では最大限の笑顔に相当するものだった。

 

「今日はもう休むわ・・・狩りの自慢話なんて聞きたくないし。だから後はお願い。・・・ねえ、シリーン・・・今の貴女はまさにこれから開花しようとする高貴な薔薇の蕾よ。私が大事にしていた種を生かすも殺すも王次第だと思っていたけれど棘を持つ薔薇だからこそ身を守れるし手折ろうとする者すら魅了できるはずよ、それを忘れないで」

 

・・・私が薔薇の蕾?レイラ様はそんな風に思われていたのね

 

てっきり人形のごとき女だと思われているのかと思っていたけれど、そうではなかったなんて。

 

ひらひらと手を振り侍女を伴い去っていくレイラ様を見送った私は、ライザール様の部屋へと向かった。

 

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