クロヒョウに襲われた絶体絶命の状況なのに不思議なほど私は落ち着いていた。

 

「・・・大丈夫よ・・怖くないわ・・そうでしょ?」

 

まるでカルゥーにするように「彼女」に話しかけたら、クロヒョウは「ウニャ」と小さく鳴き身を離すと地面に腹ばいになった。

 

カルゥーより一回り小さい体の若い女豹だった。

 

彼女はじっと私を見てなにか伝えたがっていた。

 

ふと閃いてカルゥーからもらった青い石を詰めた透かし彫りのロケットペンダントを取り出して「彼女」へと差し出した。

 

すると匂いを嗅いだ「彼女」は私の掌を舌で舐める。

なにかが通じ合った気がした。

 

「大丈夫よ!この子を攻撃しないで」

 

クロヒョウになつかれた私をライザール様は感心したように腕を組み出迎えてくれたが、ヴィンス王の方は母国語で呟いていた。

 

魔女だなんて失礼しちゃうわ。でも初対面のクロヒョウを手なずけた私をどう思うかはお国柄が反映されてしまったみたいね。

 

「この国ではあれが普通の出来事なのか・・カルチャーショックだな。そういえば噂ではライザール王ご自身がクロヒョウを愛玩されているのだったか」

 

外交を意識したヴィンス王が執り成し、ざわめきが落ち着く。

大ごとにならなくてよかったわ。