待ち望んだ2度目の求愛はあっけないほど簡単に訪れた。
踊る間私の誘惑の眼差しは常にライザール様ただお一人のものだった。
彼をなんとしても振り向かせたくて必死だったことに気づいてくれたのだろうか。
その願いが通じて妖艶な踊り子の私を手に入れたいと望み一夜の情けが生まれた。
義務ではなく欲望からの求愛であることが嬉しかった。
彼の部屋に来るのは二度目だけれどあの獣の姿は今夜もあった。
我が物顔で悠然と寛ぎながらあくびをする黒い獣は大きな猫みたいで可愛らしい。
私を見ても警戒することもないカルゥーが私をすでに受け入れていることがなんだか嬉しかった。
夜をまとったような真っ黒な毛並みの美しい雄の獣だった。
「カルゥーが気になるか?あれは私の友であるマウトグイーダだ」
マウトグイーダ?聞き覚えがあった・・それは確か伝説上の獣だったはず。死が近づくと現れるという
「死の案内人・・・ですか?」
それはいったい誰の死なのだろうか?不吉な予感がした。
「ああ・・・よく知っていたな。だがお前が潔白ならカルゥーを恐れなくてもいい。カルゥーはお前を気に入ったそうだ。だから私もとりあえずお前を信じてもいい・・わかったな?」
己自身よりもカルゥーの見る目を信じるのだというライザール様の言葉がなんだか微笑ましかった。
子供みたいな方ね。でもそれだけ彼から信頼されているなんてカルゥーが羨ましいわ。