心地よく響き渡る軽快な楽の調べに身を任せて踊りきった私に称賛の嵐が降り注ぐ。
身を包むのは興奮と達成感だった。きっと母もこんな感動を体感していたのだと思えばやはり血は争えないと実感してしまった。
大貴族のアリ家に引き取られて、友達も失ってしまって孤独だった時、慰めてくれたのは母との絆だった。
環境が大きく変わって途方に暮れていた時も母だけが変わらず私を見守ってくれていた。
数々の英才教育を受けたけれど母から教わった踊りだけは身に付き忘れることはなかったのだと思えば感慨深いものがあった。
こうして大勢の人々の前で披露するのは最初で最後だったし機会を与えてくれたレイラ様に心の中で感謝する。
貴賓席から私に熱い眼差しを送るライザール様を誘惑するように見返した後、視線を転じて隣で拍手するレイラ様の満足そうな顔に安堵を覚えた。
ご満足いただけましたか?レイラ様
「レイラや・・・これがお前の妹シリーンだ。仲良くするのだぞ」
父の背に隠れた小さな女の子、あれは幼き頃のレイラ様だった。
「ああ・・なんて綺麗なの。お父様ありがとう・・私この子を大事にするわ」
そう応えるレイラ様の声が脳裏に蘇る。
私は昔から異母姉妹の彼女のお気に入りの「人形」だった。
踊り子の人形を欲しがったけれど相応しくないからと買ってもらえなかったレイラ様の不満はこれで解消されたのだろうか?
大人になり、レイラ様と王との結婚が決まった時私の運命も決まった。
王に愛される美しい花嫁人形・・・それがレイラ様の願望だった。
あの方は私を通して世界と触れ合おうとする臆病な方だった。
だから私は彼女のために王の仮初の女になったのだから。
歪んでいてもそれは確かに愛だった。だから私も彼女を拒めない。
だってあの方はたった一人の私の姉なのだから。
だからできるだけその願いをかなえてあげたかった。
私が幸せになれなければ、やはりこの世に愛などなくすべては幻想なのだとレイラ様は絶望してしまわれるだろう。