ほどよく締まった長い手足を駆使して華麗で優美に踊る彼女の姿は一瞬で皆の気持ちを虜にするものだった。
いかにベールで顔を覆っても意志の強い目元だけでさらに想像を掻き立て美しいだろうという期待を抱かせるのに十分だった。
ほう・・これはなかなか
目の肥えた私ですら瞠目するほどの存在感を放つ彼女から目が離せそうにない。
「さすがね、シリーン・・・やるじゃない」
気まぐれなレイラですら称賛を隠そうとしない。まあことの発端はレイラの我がままなのだからシリーンの活躍で得意げなのも無理もないか。
「・・なんと淫らな・・・だが美しい」
並んで踊りを観賞するヴィンス王の感嘆の声に潜む欲望に苦笑する。
潔癖そうな彼だが見た目に反して成熟した雄そのものの貪欲さを兼ね備えているようだった。
だがやらんぞ・・あれは私の「女」なのだから
「ねえ、ご存じかしら・・・ヴィンス王」
そう思っていたらレイラがヴィンス王に何事か耳打ちした。
途端にヴィンス王の顔に動揺が走り私を見た。
レイラめ、余計なことを・・
どうせ彼女が私の女だとでも言いつけたのだろう。レイラはたんに気に入った男の気を惹きたいだけだろうが、いくら仮面夫婦だからといっても仮にも夫の前で大胆なことだ。
だがもちろんまったく気にならないし私の体面さえ傷つけなければそれでいい。