だけどその機会は思いのほか早く巡ってきた。

 

隣国との国交を兼ね、ヴィンス王がシャナーサに来訪することになったのだった。

 

公式な行事だから王妃として列席されるのはもちろんレイラ様だったのだが、主の命で踊りを披露することになってしまったのだ。

 

父を誘惑した母のことが許せないレイラ様の意趣返しなのかもしれないとも思ったが、レイラさまはただ退屈だっただけのようだ。

 

「考えてもみて。この私があんな野蛮な男と夫婦ごっこをしなきゃいけないのよ?まあヴィンス王はなかなかいい男だというから楽しみだけど。だからいいわねシリーン、貴女の自慢の踊りであの傲慢な王を陥落させてみせなさい」

 

それが主からのあらたなミッションだった。もちろん選択肢はもとよりない。

 

でもそうはいっても私だって実は楽しみだった。

 

窮屈な宮廷で踊れる機会なんてめったにないことだろう。

 

「わかりました、レイラ様お任せください」

 

とはいえ群舞としてではなくメーンダンサーとして踊らないとならないなら練習は必要ね。

 

それに妊活以外で王妃の仕事はあまりすることがない中、外国の王を歓待するレセプションで披露するショーを監修できるのは裏方とはいえやりごたえは十分だった。

 

踊り子たちとの打ち合わせや、衣装の打ち合わせ、照明や宮廷楽師との打ち合わせなど手配しなければならないことは山積みだった。

 

精力的に活動する私をライザール様は様子見とばかりに窺っていたけれど彼は助力はもとより反対はしなかった。

 

お手並み拝見といったところかしら。受けて立つわ。

 

あれ以降お呼びもかからないのが気がかりだったけれど、

今は目標に向かって頑張るだけだった。