その王とは朝食の席でご一緒することになった。
本当はレイラ様のお役目なのだけれど公式の行事というわけでもないし、あの方は朝がめっぽう弱い方なのでたぶんまだ夢の中だろうか。
侍女の話では同席はライザール様のご意向とのことだった。
昨夜の今朝だし正直気まずかった。
夫婦ならば形だけでも則っているだろうけど、私はただの代理なのだから。
「おはよう・・・よほど寝心地が悪かったと見える・・・顔色が悪いぞ」
良くとおる王の声に身が引き締まる。表情は相変わらず何を考えているのか読めなかったが、一応心配はしてくれているようだ。
「おはようございます、ライザール様・・・ご心配なさらなくても大丈夫です」
チークをもう少し濃くすればよかった。朝だから控えめにしたのが裏目に出てしまった。
ここは宮廷なのだから不調を悟られないようにしなければ・・・
笑顔で返したが、偽りを読み取ったのかライザール様は不信そうだった。
「まあいい、自分を労わることだな。だがそんなに繊細ではこの場所ではもたないぞ?・・・安全が確約できない場所であることを片時も忘れないことだ」
そういってライザール様が手ずから器から取った葡萄の一房を寄越す。
艶やかで黒々としたたわわな実がいかにも美味しそうだったが、
ライザール様の忠告が暗に示すものを考えたら思わず身が強張ってしまう。
飲み物も食べ物も安全ではない・・そういう場所なのだここは。
けれど私は自分の中の恐怖心を抑え込むと笑顔でその葡萄を受け取った。
葡萄を受け取る時ライザール様の大きくてがっしりとした骨太な指先が触れて思わず意識してしまう。
――あ
「ありがとうございます・・・いただきます」
昨日、素肌に触れた彼の指を思い出してしまい自然と頬が染まる。
見つめられたまま、葡萄を一粒口に放り込むと甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がった。
あ・・甘くて美味しいわ
毒が入ってないかなんてびくびくしていた私だけど美味しい食べ物を食べたら自然と顔がほころんでしまった。
「・・そうやって笑っているほうがずっといい」
!
私の様子を窺っていたライザール様の言葉に優しさを感じて彼に対する印象が少しだけ私の中で変化するのがわかった。
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