「あら・・まあそれはようございましたね。・・ふふ・・それで?ライザール様はいかがでした?」
!?
侍女の言葉に羞恥を覚えながらもなんと答えたものか迷ってしまう。
いかがもなにも昨夜が初体験だったから緊張もあってあんまりよく覚えてないとしかいいようがなかった。
キスはベール越しだったし愛撫もかなりおざなりだった気がする。格別初夜に夢があったわけじゃないけど現実はあんなものなのかもしれない。
私は役割を果たすのに必死だったし、ライザール様は始終淡々としていたようだ。
機嫌が悪かったのでなければ常に彼はあんな感じなのだろうか?
「・・ライザール様がどんな方かよくわからないわ。・・・冷たい方なのでなければ私に無関心なのでしょうね」
私の言葉から察したのか侍女が一つ頷くと周囲を憚るように声を潜めた。
「無理もありませんわ・・行為の最中に命を狙われることもあるそうですからね。屈強な男よりある意味女性の方が油断できないのでしょう」
!?
訳知り顔の侍女もどうやら噂を聞きかじっただけのようで詳細は知らないことに安堵しながらも、正直言ってショックだった。
欲望に流されることもなく情事の最中に冷静にそんなことを考えているなんて。
そして改めてここは暗殺者が暗躍する王宮なのだということを思い知る。
それになによりあの方に抱かれながら冷徹に暗殺を目論む女がいることになんだかもやもやしてしまった。
そんな女だと思われたことは心外だったが、おそらく経験に裏付けされた疑念なのだろう。
彼のそっけない態度の理由がわかっても気は晴れなかった。
遊びなのか本気なのかは知らないけれど、寝所に迎えたということはある程度信頼していたのだろうに・・・
欲望や愛すらこの場所では凶器になってしまうのだということがただ怖かった。
――気の毒な方
思わずそんな風に思ってしまった。
すべてを持つ王であっても心を許せる相手はあの黒い獣だけなのかもしれない。