冷徹な王であると同時に情の厚い男でもある貴方だからこそそのギャップに惹かれるのかもしれない。

 

だからこそ孤高の王である貴方の良さが他の人にも伝わればもっとたくさんの人が貴方の力になってくれるでしょう?

 

裏切りや欲望にまみれた思惑がライザール様の心を凍てつかせてしまったから心を許すのは簡単じゃないこともわかるけれど、一人でできることなんて限られているし、心を押し隠したままでは本当の信頼関係なんて築けないもの。

 

私自身がそうだったからライザール様の気持ちもわかるし、誰も寄せ付けない彼の頑なさに周囲が感じるジレンマもわかるから、もし私にできることがあるとすれば彼と彼を取り巻く人々の架け橋になることかしら。

 

でもこの宮廷においての私の立場はまだ不明瞭だった。まだ辛うじて婚約者の立場を保っていたし、彼に抱かれていることは皆も承知していたけれど、これからどうなるのか私がどうしたいのか考えなくてはならなかった。

 

いくら誤解が解けて気持ちが本物になったとしても、私は所詮偽物の女だった。

 

ライザール様のことを真に思うならこの宮廷から一刻も早く去った方がいいのだということもわかっていたのに・・初めて愛した人と離れがたくてずるずると先延ばしにしてしまっていた。

 

ジェミルも戻ってこなかったけれど、ライザール様との関係に夢中になっていた私はいつの間にか彼を待つことはなくなっていた。

 

でも人生が一期一会なのだとしたらそれが普通なのかもしれない。

 

ジェミルが傍にいることが当たり前のように思ってて失う可能性なんて考えたこともなかった。そして私はジェミルの差し伸べた手をとらなかったのだから。

 

彼が戻らなかったとしても、安否がわからなかったとしてもそれは受け止めなければ。