不治の病の店主様の治療薬を手に入れるために密命を帯びた私の目的はただひとつ
欲情したライザール王の血だった。
そのために王の婚約者のレイラになりすまして王の傍に侍ることはできたけれど、
用心深く猜疑心の強い王の油断を誘うために誘惑を繰り返すこと数回、すべて失敗に終わっていた。
まったくなんて男なのかしら・・やってくれるじゃないの
誘惑に長けた私の自信はことごとく打ち砕かれプライドはずたずただった。
ライザール王はこちらの思惑を読んだかのように触れることを許さなかった。
触れることができなければみだらな技で篭絡することもできるはずもなく、血を奪う機会すらない。
それどころか甘えたふりして誘惑しようとした私をこの男は拘束したのである。
両腕を縄で縛られ寝台の上から垂れた鎖に繋がれた無防備な状態の私の体を一方的に弄ぶライザールに対する苛立ちが募る。
私の痴態にあてられたのではなく、そうすれば気が済むのだろうとばかりの彼の双眸に情欲は欠片もなく冷徹なまでの眼差しが私の一挙手一投足を見逃すまいとばかりに注がれていた。
こんな時まで冷静だなんてどんな神経をしているかしら?
およそ欲望に身を任せることなどないのかとも思えたが、もしくは手痛い失敗から学んだのかもしれない。
いずれにせよ私に与り知れぬ事情ではあったが、店主様のためにこの男をその気にさせるのが私の仕事だったからこちらも引くに引けなかった。