指だけではもはや物足りなかった。
この男が欲しい・・・
そう自覚してしまったら我慢できそうになかった。
「ねえ・・・指だけなんてつまらないわ。貴方こそやせ我慢しちゃって」
唯一自由になる口でライザール王をそそのかす。
これまでの誘惑においても彼は一方的に私に快楽を与えるだけで彼自身の欲望は頑なまでにけっして解放しようとしなかった。
こんな忍耐強い男に会うのは初めてだった。
使い込まれた武器を研ぎ澄ませながら容易には振るわないそんな熟練の匠のなせる業だったが、女からしてみたらもったいぶった
いけすかない男でしかなかった。
熟れた私の体ならこの男だって満足するはず・・・
「つまらない意地をはらないで私と愉しみましょうよ」
確かめるまでもなく彼だって十分高ぶっていた。
蠱惑的な眼差しで見つめたまま挑発するように唇を舐めながら、囁くとライザール王が息をのんだ。
「いくら私を誘惑しようと無駄だ・・・諦めろ」
しかしやはり彼が流されることはなく落胆を覚えると同時に無性に苛立ちが募った。
なによ!今に見てらっしゃい・・私が必ず貴方を跪かせてあげるから
この膠着状態を覆すことができる起死回生の策が実はあった。
それにライザール王が知らないこともある。
実はこうみえて縄抜けは得意だった。
彼を警戒させたくないから拘束されているだけにすぎなかった。