――あっ・・・

 

容赦ないせめぎあいの末勝ったのは彼の方だった。

 

ほとばしる激情から解放された私の心を占めるのは思い通りにならないライザールに対する情動と執着だった。

 

鎖で繋がれて尚気高いこの男は王そのものだった。

 

私同様欲望を発散させて尚冷静さを失わない無情な彼を振り向かせて本気にさせたい衝動にかられる。

 

この男はどこか私に似ているのかもしれない。

いかなる時でも冷静さを失わないのは密偵としての性だった。

 

私の打算をこの男は見抜いてるのだろう。

だからこそ心を凍らせてやり過ごそうとしているのだ。

 

憎らしい男だと思いながらも、そんな彼から目が離せそうにない。

 

とはいえここには仕事で来ている以上役割は果たさなければならなかった。

 

隠し持っていた専用のキットで採血をするとライザール王は怒りを露わにした。

 

「私の血をどうするつもりだ!?」

 

当然の反応だし説明する気はなかったから聞こえないふりをした後、採取したものを廊下で待機していたジェミルに手渡した。

 

「これを店主様に渡して、お願いね」

 

愛想のないジェミルは一つ頷くと無言で撤収しないのかと目で問いかける。

 

「私はちょっと用があるから・・じゃ、頼んだわよ」

 

不審顔のジェミルを追い払った私はライザール王の元へ戻った。