「ね、そんなに怒らないでライザール様、確かに私は貴方を利用したけどそれが私の仕事だもの。だけどここからはプライベートよ?だからいいでしょう?」

 

私が触れるだけではなく彼が触れるだけでもなく、互いに抱き合って触れ合いたくてたまらなかった。

 

その甘美な誘惑は私の理性を凌駕しようしようとしていた。

女の密偵が情にほだされてしまうのは理屈ではない。

 

しょせん男と女だもの・・いい男を欲しがってもいいでしょう?

 

彼の目を見つめながら誘惑するように囁くと、ライザール王が不敵な笑みを浮かべた。

 

「この期に及んでまだ私を篭絡できるとでも?・・・後悔するぞ」

 

密着しているから彼のたかぶり具合もわかってしまうし、彼には私の興奮が伝わったはず。

 

もちろん彼がその気になったら私を一瞬で締め技で落とせるでしょうけど

 

だから本当にそれは一か八かのかけだった。

 

自分でも愚かだと思ったけれど私自身体だけじゃなくて心でも彼を欲していたから試したかった。

 

男を手玉にとってこそ悪女のたしなみといえた。

でも悪い女だからといって心を渡さないわけじゃない。

 

うっかりターゲットに惚れてしまうことだってあるし、私の目を覗き込んだ貴方にもそれは感じ取れるはずでしょう?

 

カチャリ

 

鎖から解き放った途端、予測通り態勢が逆転していた。

私の肩を押えるように見下ろす彼の双眸を覗き込む。

 

少しでも手の力を強めれば命すら危うかったけれど、私は見上げた彼の目から目をそらさない。