ライザールは気絶した『レイラ』を抱き寄せると顔を覆うベールを取り去った。

 

「ほう・・これはなかなか上玉じゃないか。気に入った・・これからも可愛がってやろう」

 

その艶やかな紅の引かれた唇に引き寄せられるように口づける

 

婚姻を交わしたとはいえ政略的な意味合いしかもたず、花嫁にも子作りにも興味はなかったが、仮にも王である自分に身代わりを差し出して済ませることに苛立ちは募った。

 

だからやってきたこの女の気持ちにお構いなしに無情に抱くことにした。

 

それでも油断はできずにまずは服を脱がせたのは、暗器を隠し持ってる可能性を排除するためだった。

 

女は恥じらいは見せたが見守る私の前で一枚一枚脱ぎ無実を証明した。

 

身体に毒を仕込むことも想定できたが、その場合は女も無事には済まない。

 

それだけ暗殺を恐れる私にとって情交は無防備になりうる絶好の行為だと言えた。

 

女が体にあしらったヘナ・タトゥーは無害のようだったが、触れることはやはり躊躇われたから愛撫は割愛した。

 

だが結局彼女はただの私への供物だった。

 

悲壮な決意をしたのかうっすらと涙ぐんだ様が憐憫をそそる。

 

――この女も気の毒にな・・・

 

もとからシャナーサにおいては親が取り決めた婚姻が一般的ではあったが、それでも婚姻を結んだ主の身代わりにならなければならない彼女を哀れに想う。

 

そうと知りながらなかば八つ当たりで抱いた私も共犯だった。

 

私は隣で寛ぐカルゥーを見る。

 

「どうだカルゥー?お前も彼女を気に入ったか?」

 

「グルニャン♪」

 

どうやら私だけでなくカルゥーも彼女を気に入ったようだった。

それは希なことだったが、幸先のいい出来事だと言えた。

 

女を見る目は私より遥かにカルゥーの方があるからだ。

 

どれだけ愛情深い女を装っていてもカルゥーの目を胡麻化すことは困難だったが、今夜現れた彼女は緊張こそしていたが、爛れた欲望も嫌悪も敵意すらない美しく無垢なる女だった。

 

ベールをつけたままなのはおそらく主の命に従っただけだろうが、できれば彼女の唇にはさまざまな悦楽を覚えさせたかった。

 

「私自らじっくりと手ほどきしてやろう」

 

方便でしかなかったが子作りのためだと言えばこの女も拒めまい。

 

甘く柔らかく抱き心地の良い彼女を抱きしめる。

 

「久々に私もゆっくり眠れそうだ」

 

カルゥーがいるとはいえ用心深い私がそう思うこと自体珍しいことだった。