初めて唇を合わせたのは16歳の時だった。
傷ついた彼に薬湯を飲ませてあげた。
私は子供すぎて彼は振り向いてくれなかったけれど忘れないでいてくれた。
舞妖妃として名をはせた私の裏の顔を知った彼は微かな望みをかけて私のクライアントになった。
レイラさまに恋人がいたことを承知した上で彼女を婚約者に選び、同時に送り込んだ密偵を使い二人が駆け落ちするように仕向けたなんて、策士ね。
体面を守るためなんて方便を使ったのも婚約者に成りすませた私を傍に置く口実だった。
でも私が処女だって知って奪うのを躊躇ってしまった。
彼は優しい方だから。
侍女達を所望するふりで私の反応を窺ったのも彼の発案だった。
侍女たちはノリノリで協力したそうよ。
みんなから見たら私はまだまだ子供だったのでしょうね。
もし私が拒んだらそれまでで諦めるつもりだったと打ち明けてくれた。
密偵なのに処女を死守してきた気持ちを尊重してくれたのね。
強引に私を手に入れようとしながらも常に逃げ道は用意していてくれた。
だけどジェミルの存在が彼に危機感を与えたようだ。
だってジェミルは私を巡るライバルだったから。
私の気が変わることをライザール様は恐れていた。
確かに揺れたけどジェミルを逃げ道にはできないわ。
私が宮殿を去ったことを知ったジェミルはライザール様のところへ乗り込み自ら正体を明かしたそうだ。
ジェミルらしい物騒なやり方でライザール様を説得したらしい。
義賊の王と暗殺者の王子との間で高度な政治的駆け引きが行われて、ライザール様が私を迎えに来ることになった。
そして今に至る。
