一緒にいたから見えないこともあるはず。

 

一緒にいても別ればかり考えてしまうなら、一人になったら何を想うのかしら?

 

そう思うのに・・・私ってバカね。

 

挨拶もそこそこに宮殿を去り、カマルに戻ってきたけれど気分は最悪だった。

 

本当は引き留めて欲しかったけれど婚約破棄をしたばかりの後だけにスキャンダルは避けたいのだろう。

 

彼が来てくれないならこちらから行くしかなかった。

でもどこへ行くかが問題よね・・?

 

心当たりは一つしかなかった。

 

夜になってから行動を開始する。

宮殿に忍び込みライザール様の部屋が見える場所で待機することしばし

 

見張っているとやがて変装したライザール様が姿を現した。

蛇香のライラ ライザール ルト ライラ・ヌール

彼は窓から出て慣れた動作で宮殿を抜け出す。

 

 

まさか窓から出入りしているなんて思ってもみなかったわ。

しかもあの格好どことなく見覚えがあるのは気のせい?

 

こちらの気配を察知されないように距離を保ったまま尾行を続ける。

 

やはり彼は町へ向かうようだった。

 

それにしても・・・この方向って・・・

 

来た道を戻る感覚に戸惑いを隠せない。

疑惑は近づくにつれ徐々に確信へと変わる。

 

 

ライザール様が向かった場所、それはカマルだった。

 

まさか!?

 

迎えに来てくれたのだろうか?

それともただお忍びで会いに来ただけ?

 

それは似て非なるものだった。

一時の慰めや戯れなんてもう嫌だった。

 

でも彼が来てくれたなら確かめないとね。

 

彼が裏口へ向かったのを察した私は堂々と入り口から戻り、

店主様にご挨拶してから部屋へと戻る。