侍女頭を伴いレイラさまは去り、私はライザール様の元に戻った。

 

「戻ったかシリーン、私の依頼は無事達成できたな。礼を言う。」

 

感情の読めない王の顔で感謝を述べるライザール様に私も密偵として応じる。

 

「恐れ入ります。私も無事達成できてよかったですわ、ライザール様」

 

上滑りの口上を述べながらも笑みは絶やさない。

 

――悲壮感なんて漂わせないんだから!

 

――もうあんな辛い別れは嫌なの!

 

ダメだわ・・やはり彼は『この場所』では『王』でしかいられないのね・・

 

どうやったら本音を引き出せるのかしら?

 

考えるのよシリーン・・追うばかりじゃきっと彼は手に入らない

 

そうよ、女たるもの男に追わせてこそだわ・・

 

なら私がやるべきことは決まったわね

 

さあここからが本番よ、ライザール様に仕掛けるわ。

 

勝算があるわけじゃないけど貴方に私の望みを暴けるかしら?

 

「申し訳ありませんが、店主様から急ぎ呼び戻されたのでこれでお暇をいただきますわね。またなにかご用命がございましたらご指名ください」

 

「シリーン?どうしたんだ急に・・」

 

先手必勝とばかりに儀礼的な挨拶を交わした私はライザール様に引き留める間を与えずに踵を返す。

 

貴方を愛していても私は都合の良い女じゃないもの。

疑り深い貴方なのにそんな顔しないでよ。

 

別れ際に見せたライザール様の傷ついた顔を思い出すだけで胸が痛い。

 

私を引き留めようと手を伸ばしながら彼は動くこともできずに追っても来なかった。