ジェミルと別れた私はレイラさまの元へ向かう。

 

ライザール様にはあらかじめ時間を割いていただく約束をすでにしていた。

 

もちろんレイラさまのことも話を通してある。根回しは万全だった。

 

「レイラさま、それでは参りましょうか」

 

緊張した面持ちの彼女を伴いライザールさまの部屋へ向かう。

 

依頼は王の体面を保つことでありレイラさまが戻られるまでという期限付きだったから婚約破棄を見届けた瞬間私の依頼は達成となってしまう。

 

長かったようであっという間だった気がする。

 

心残りは・・・あるわね。

 

それは・・・ライザール様と私の関係だわ。

 

彼の抱えた秘密を暴くべきなのか悩んだこともあったけれど、

やっぱり私はライザール様のことを知りたかった。

 

でも暴くのではなく貴方に打ち明けて欲しかった。

 

私を信じてくださらないの?

 

レイラさまは明日にも発たれるだろうから私に残されたチャンスは今夜限りだった。

 

最後の夜をどう過ごすべきかしら・・?

 

ライザール様は今夜私を所望されるはずだけど・・・それでお別れなんて悲しすぎるわ。

 

ライザ様のために身を引いたサーラ様みたいにライザール様をこの場所に置きざっていくなんて心苦しいけれど、今夜こそライザール様と決着をつけようと思う。

 

「ライザール様、レイラさまをお連れしました」

 

声をかけ部屋へ入るとそこにはライザール様の姿があった。

 

「ああ、よく来たレイラ、待っていたぞ」

 

鷹揚に頷くライザール様の前に進み出たレイラさまが恐縮した様子で挨拶を返す。

 

「王様、お無礼をお許しください。体面を傷つける気はありませんでした。申し訳ございません。ですが私はすでに人妻です。貴方と結婚はできません」

 

 

本来なら許されないことではあったけれど、ライザール様自身婚約者のある身で私と親密になってしまったせいかレイラさまを非難することはなかった。

 

なによりライザール様相手でも物おじしないで意見をはっきりとのべるなんてレイラさまの度胸は計り知れない。

 

「ああ・・・事情は知っている。アリ家との婚姻を私から望んでおきながら至らない点がありすまないと思う。だから双方の合意に基づき婚約破棄とする。」

 

ライザール様が宣言されたことで解放されたレイラさまは温情でお咎めなしだった。

 

王の気が変わらぬうちとばかりにレイラさまもすぐにフレイル帝国へと発つことになった。

 

「王様が許してくれてよかった~これも貴女のおかげね、ありがと!シリーン。お父様はなんとか言っても私に甘いし孫の顔をみれば気が済むでしょ」

 

 

レイラさまには驚かされてばかりだわ。

 

「じゃあまさか?」

 

「見送りはいいわ・・貴女こそ王と話しがあるんじゃない?・・それじゃあね、シリーン元気で・・頑張って」

 

照れた様子で頷くレイラさまの顔は幸せそうだった。