その前に・・・私は腕輪を外しジェミルへと差し出す。

 

「・・この腕輪はやっぱり受け取れないわ。私は王であってもなくてもライザール様が好きなの。だからごめんなさい、ジェミル」

 

腕輪だけど婚約指輪に相当する品だった。

 

「・・・・・・・いったん渡したもの突っ返されるなんてカッコわり~ガーン

 

ジェミルだって男の子だからプライドだってあるでしょうけど、でもこれは大切なお母さまの唯一の形見だったからやはり「いらない」とは言えないのだろう。

 

「・・・・・ん・・・そんな顔すんなって・・・」

 

しぶしぶと言った様子でジェミルは腕輪を受け取ってくれた。

 

――ごめんなさいジェミル

 

腕輪の重みが消えたせいか腕がやたらと軽く感じる。

でもその腕輪があったからライザ様はジェミルの生存を知ることができたのだから。

 

「私・・思うんだけどきっとサーラ様がジェミルとライザ様を引き合わせるために一時的に私の元にきたんじゃないかしら?」

 

それにその腕輪があったからあの晩ジェミルは私がシリーンだと悟り思いとどまってくれたのだ。

 

「ああ・・・それわかる気がするぜ。俺はあの夜レイラを殺る気なんてなかったけどシリーンはオーサマのことが好きだったみたいだしなんとかしてあの女に諦めさせようと思ったんだよな。ちょっとビビらせたら身引くかと思ってさ」

 

 

まさかジェミルがレイラさまを襲撃したことにそんな思惑があったなんて思いがけないものだった。

 

「俺もライザールがそんなに悪い奴だなんて思えなくて迷ってたんだぜ・・これでも。ソフトクリームおごってもらったからじゃないからな!でも万が一殺っちまったらレイラが寡婦になるだろ?俺のせいでお袋みたいな女増やしたくなかったんだよな」

 

それは本当にジェミルなりの優しさだった。

 

「さすが正義を標榜する暗殺者だけあるわね」

 

笑顔でそう言ったらジェミルは気まずそうな顔になった。

 

「アンタけっこー修羅場くぐってるだろ?俺の剣受け止めたくらいだもんな?手加減してなかったのにさ」

 

ぎくっ

 

そこは突っ込まれたくなかったわね。だから私も笑顔でごまかす。

 

「まあそれはご想像にお任せします」

 

お互いプロ同士詮索しないのは暗黙のルールだった。