「少ない情報でよく見抜きましたね。・・ええ、そうですよ、お嬢さん。私がこの国の王・・ややこしいので仮にライザとお呼びください」

 

王なのになんて腰の低い方なのだろう。ライザ様は恭しく挨拶をかわす。

 

「ではやはり貴方がジェミルの・・?」

 

私の問いにライザ様は頷くと打ち明けてくれた。

 

「そう、ジェミルは私とサーラの間にできた息子です。私たちは愛し合っていましたが身分が違いすぎて結婚はできませんでした。

そして彼女は一人で息子を産んだ。

 

その腕輪は初恋の記念に私が彼女に贈ったものです。ですが彼女の存在をよしとしなかった者たちが彼女を亡き者にしてしまい、ジェミルも行方不明になってしまいました。

 

探したけれど再会はかなわなかった。私は身体が弱く彼女を守ってやることができませんでした。己のふがいなさをどれほど悔やんだことか。ただ彼女の残してくれた息子の存在だけが心の支えでした。

 

そんな私の元にある日『彼』が来て、この国を変えたいと訴えた。その心意気をかい私は彼に王位を譲ったのです」

 

 

「それがライザール様なのですね・・あ、ごめんなさい」

 

本物の前で彼をライザールと呼ぶことは失礼にあたるかもしれなかったが、私にとってやはり彼がライザール様だったから複雑だった。

 

「ええ・・・そうですよ、お嬢さん」

 

憤慨することもなく受け入れていることに驚きながらもそれだけの月日が経過したのではないかと感じた。

 

「貴方の知る彼がライザール様で間違いありません。ですがジェミルの父は私ですからご安心なさってください」

 

 

やはり私の葛藤を見抜かれてしまっているようだ。

 

「貴方はライザール様の正体を御存じなんですね?」

 

確信を持ちながら尋ねると彼は頷いてくれた。

 

「知っていますよ。でもそれは私からお答えすることではないでしょう。貴女がご自分で確かめればいい」

 

それは確かにその通りだったから頷く。

 

ライザール様の正体を知るために踏みこむか留まるか決めるのは私自身だった。