「お願いだから・・・ライザール様を傷つけないでっ」

 

ご両親のことで傷ついたジェミルのことを私は知っていたのに・・・

思わず出てしまった言葉だった。

 

「・・・・っそれを俺に言うのかよ!!俺よりアイツの方が大切なんだな・・・ちっくしょ~・・俺の存在がアンタを苦しめてるなんてな・・」

 

!!

 

ああ・・・どうしてこうなってしまうのだろう・・ジェミルを傷つけてしまうなんて

 

ライザール様を恨んでいたとしてもジェミルがライザール様の息子であるなら彼にとっても大切な息子であるはずなのに・・・

 

ライザール様の愛を受けた別の女性が生んだ子であることがひっかかってしまって一瞬だけどジェミルを疎ましく思ってしまった罪悪感が心をむしばむ。

 

「ごめんなさい・・お互いに頭を冷やした方がよさそうね。少し考える時間をもらえる?その代わり貴方のことは誰にも言わないから・・・ね、お願いジェミル」

 

暗殺者にとって目撃者やそれに類する者の存在など目障りなだけだろう。

 

もし知り合いでなければきっとジェミルは排除することを躊躇わなかったはず。

 

私達の絆が辛うじて彼の殺意を押しとどめているのだ。

密偵としての駆け引きもできないほど私もまだ動揺していた。

 

「・・・・わかった。・・・・シリーン・・・ごめんな」

 

何を謝ることがあるというの?貴方を傷つけたのは私の方なのに・・・

 

レイラさまのふりをしたのだって私の都合だった

 

「・・・ええ、私こそごめんなさい・・ジェミル」

 

私の謝罪を辛うじて受け入れてくれたのか軽く頷いたジェミルはそのまま闇に消える。

 

また夜の静寂の中に一人取り残されてしまった。