月明かりに照らされた中庭には人気はなかったが、私はレイラさまを装いながらも用心は怠らなかった。

 

手紙にあったライザール様の秘密にも心当たりがないわけじゃなかった。

 

夜な夜な外出する彼に秘密の匂いをかぎ取っていたからだ。

何度も抜け出す彼を尾行しようと思って断念した。

 

もしバレて信頼関係まで失ってしまうのが怖かったから見て見ぬふりをしていたことが正しかったのかはわからないけれど、失恋したばかりの私に彼を追及する気力がなかったのだ。

 

だからレイラさまに来た匿名の手紙を調査するのは久々の密偵モードだっていえるかもしれない。

 

もちろん根底にあるのはライザール様の秘密への好奇心だったから動機はかぎりなく不純ね。

 

 

その時だった突然背後に殺気を感じたと思った瞬間、忍び寄った何者かに背後をとられてしまった。

 

ゾクリと肌が粟立つほどの殺気に包まれる。

 

――いけない!!

 

気づいたときには背後から抱きこまれて喉元に鋭利な刃の感触を感じた。

 

刃は肌に当たってはいたが傷はつけない絶妙な加減で押し当てられている。

 

もし少しでも動けば一太刀で絶命するのがわかり緊張をはらむ。

出そうになった悲鳴を咄嗟に飲み込むことしかできなかった。

 

「声を立てるな・・」

 

低く押し殺した声が耳から忍び寄る。

 

――この声・・・まさか

 

嫌な予感を覚えながらもレイラさまの演技を続けながら頷く。

 

疑念から生じた動揺がより一層悲壮感を添えた。