「レイラさまは強いのですね」

 

羨望をにじませる私にレイラさまは微笑む。

 

「ありがとう。でも私は強くなんかないのよ?ただ自分の気持ちに正直なだけだもの。ねえ、シリーン貴女はどうするの?このまま諦めちゃうの?まだ王を愛しているんでしょう?」

 

 

畳みかけるように気持ちを確認するレイラさまの言葉が私の切り離したはずの感情を揺さぶる。

 

――愛してるわよ!!

 

「望んでもいいのでしょうか?」

 

たまらずそう尋ねた私にレイラさまが頷く。

 

「聞く相手を間違ってるわよ。でもいいわ、私が背中を押してあげる。恋は盲目というけど貴女はよくそんなに冷静でいられるわね。私なんかもう舞い上がっちゃってハサンしか見えなかったけど・・まああの王じゃ無理もないかしら~逃げてよかったわ~無理~あせる

 

レイラさまは世間知らずだけれどその実、私なんかよりよほど大切なことを御存じな方なのかもしれない。

 

「シリーン聞いて、私逃げるのをやめて王に直談判するわ」

 

 

レイラさまには驚かされてばかりだった。その細い体のどこにそんなパワーが秘められているのだろうか。

 

「許してくださるかはわからないけれど、きちんと謝罪して改めて婚約を破棄していただくつもりよ。その方がたぶん貴女にとってもいいと思うわ。」

 

 

心のどこかでこのままレイラさまになり替わったままでもいいからライザール様の妻になりたいなんて虫の良いことを思ったこともあったけれど、それじゃあダメだということなのね。