別れ話の後に仕事なんて最悪だけど職場で相手を選んでしまった私が悪いのだからしかたないのだろう。
ジェミルにもどんな顔をして会えばいいのかしら?
ライザール様と別れたからってジェミルを選ぶ気はおきなかった。
他の誰かで癒すことなんてできやしないわ。
心がどれだけ荒れ模様でも私は悲しいくらいいつも通りだった。
失恋なんておくびにも出さない。
でもなぜかこんな時にかぎって一人ではいられないらしい。
今日の同輩は新入りの娘だったがその娘はいわゆるトラブルメイカーだった。
名前はアニーサだったかしらね。
不器用というか見ていられないほどのドジっぷりに必然的にフォロー役に回っていて悲しんでる暇もないのがせめてもの救いだった。
「ああ・また割っちゃった・・・配膳って難しいわねえ・・・」
猫の手も借りたいほど忙しいのに余計な仕事を増やす彼女に対して同僚たちの風当たりは強かったが、不思議なことに彼女がミスをしても責任者である部署の長は見て見ぬふりをしていた。
――これはなにかあるわね
適材適所とは言い難いのにクビにもならない彼女は陰口の的だったが本人はいたって真剣で悪気はないから懲りない。
まことしやかに部署長の愛人だなんて噂すら飛び交っていたが好奇心は疼いても今の私はとうていそんな気分になれなかった。
だってライザール様に失恋したばかりなのよ!?
それでも約束通りレイラとしてご一緒してはいたけれどあれ以降彼が触れてくれることはなかった。
身も心も寂しくてたまらないのに、ライザール様も相変わらず一人だったから寂しいのは私だけじゃないって思ってなんとか自分を慰めてやり過ごしていた。
最悪な気分でも新人教育係に抜擢されてしまった以上頑張らなければ。
ジェミルもあの日以降気まずいのかなんとなく避けられてるみたい。
失恋はお互い様だったけど傷をなめあうなんて私の柄じゃないわ。
弱ってる時に優しくされたら私だって揺らいでしまう・・それが怖かった
それにライザール様を想う気持ちを裏切ることはできなかったの。