ライザール様に席を勧めて向かい合って座った私達は朝食をとった。

 

「うむ・・やはり美味い。これはお前が作ったのだろう?」

 

 

微妙に気になる言い方をするライザール様だけど私が彼に料理を振舞ったのはこれが初めてのはず。

 

宮殿では一緒に食事をしたことはもちろんあるけれど、お抱えの料理人が作ったものだけだし。

 

「ええ・・そうよ。自分でも作るし豆のスープはよく食べるわ。でもライザール様が召し上がってくれてよかった。私に毒見させたら全部食べてしまうもの」

 

実際そうなる可能性は十分にあった。こう見えてもけっこう食べるし、でもそれはあくまでも照れ隠し。本音は彼が疑わずに食べてくれたことが嬉しかっただけ。

 

猫が初めて手から食べてくれた・・って感動がわかるわ

 

それだけ心を許してくださっているということですものね。

 

「お前が出したものなら何でも食べるぞ。私は別にグルメじゃないしな」

 

 

それは意外なお言葉だったけれど、宮廷料理は豪華だけど毒見は必須だし気持ちはわかるわ。私はあまり気にしないで食べてた気がするけど、ライザール様が用心されるのも無理ないわね。

 

「お上手ね・・・でも嬉しいです」

 

好きな人に美味しいって食べてもらえるのってこんなに嬉しいことだなんて思わなかった。私は殿方に夢を売る商売だしあまり生活感は出さないようにしているからとても新鮮だった。

 

部屋に招いたこともだけどそうやって少しずつ手探り状態で彼の人柄を量ってきたけれど、王としての彼もこうして一緒に寛いでいる彼も親しみを感じるのにそれでもやはり彼は近くてとても遠い存在だった。

 

「美味かった・・・私のために料理してくれた女は母以外ではお前だけだ。母もよく私に豆のスープを作ってくれた・・懐かしい味だ」

 

 

宮廷お抱えの料理人は基本的に男性だけだったから不思議はなかったけれど、仮にもライザール王のお母さまといえば亡くなった皇太后さまよね?そんな方が料理なんてするのかしら?

 

それにしてもお母さまの話をしていただけるなんてなんか嬉しい。

彼の口から家族の話がでたのは初めてかもしれない。

 

「そうだったんですね。そうおっしゃっていただけて嬉しいです。私は両親を知りませんから羨ましい。・・・でも私にとって店主様が親代わりですから寂しくはありませんでした。お金が好きで無茶振りする困ったボスですけどね」

 

出会ったとき店主様は温かいスープを飲ませてくれたけどカマル専属の料理人が作ったものだし。

 

でも冷えた体にはしみる味だったわ。