「それではライザール様、私はこれで失礼いたします」
そう挨拶をして青年が去った後私とライザール様だけになる。
少しだけ気まずかった。
ちょっと反応を見てみただけなのに、まだ怒っていらっしゃるのかしら。
不安が募ってしまい彼の服の袖を軽くひっぱって様子を窺う。
「怒ってない・・・そんな顔をしなくていい。あんな若造がお前に贈り物をしたのがひっかかっただけだ。その腕輪はそんじょそこらの品ではない。宝物庫にあってもそん色ない逸品だ。こう見えても目は肥えているから確かだ。目印などで渡せるようなものではないし一介の使用人が分不相応だ。・・よもや盗品じゃないだろうな?」
!
そこまで大ごとに扱われていたことに驚いてしまう。
「そんな高価なものなのですね。でも盗品だなんてひどすぎます!あの子はそんなことする子じゃありませんから」
思わずジェミルを庇ってしまう。案の定ムッとするライザール様に気づき根拠のない感情論では彼を説得できないと感じた私は不在のジェミルに代わり冷静に口添える。
「思うのですがこれはあの子のご両親の縁の品なのではないでしょうか?・・もしそうなら確かにライザール様のおっしゃる通り目印のために譲渡するはずはないですけど。ライザール様は女の直感を信じませんの?」
仮に形見ならばそんな大切な物を再会の記念や、まして目印などという理由で贈るはずはないのだが。
「いや、女の直感はあなどれん。特に密偵であるお前の勘は信用できる」
どこか気まずそうなのは侍女たちに手を出そうとしたことを私が見抜いたからかしら。未然に防げて本当によかったわ。
浮気しちゃ嫌よライザール様![]()
「いずれにせよ、そんな高価な品をお前に贈るくらい真剣なんだろう。・・なのにお前ときたら・・・さては相当貢がれ慣れているな?」
ぎくっ![]()
「それはまあ・・・一応舞妖妃ですから。お客様から高価な品はいただきますけれど・・・」
お客様は裕福な方ばかりだし、貢ぎ物も高価なものだから転売したり質入れしたりしてるのは内緒よ
私の言葉に訝しむ眼差しになったライザール様だったけれど、名案を思い付いたのか愉快そうに言った。
「では私も何かお前に贈ろう。楽しみに待つがいい・・・」
!
王からの贈りものなんていいのかしら?
でもこれは対抗心を煽られているだけかもしれないわね。
私のために公費を無駄遣いさせられないもの。
「なら今度市場でなにか買ってください
」
市場なら庶民でも手の届く安価なアクセサリーの出店もあるし、普段使いできるものの方が落ち着く。実はお気に入りのお店があるのよね。
「なんだ、そんなものでいいのか?欲のない女だな。・・・私はケチではないぞ。だがいいだろう、約束だ」
ライザール様はしぶしぶと言った様子で了承してくださったけど、まずは安全のために暗殺者の正体を突き止めた方がいいかしら。
う・・・んでもお忍びで行かれるんだしむしろ王宮より町の方が安全かしら?
特に期限を決められたわけではなかったけれど、どのみち早く解決した方がいいわよね。
王の身を守る口実で毎夜寝所に侍る約束はとりつけたけど、やっぱりちょっと早まってしまったかも。
毎晩あんなに求められたら身が持たないわ。
ライザール様ったら私の体が柔らかいのをいいことにいろいろ試そうとするんですもの。
替わりに私を持ち上げて
トレしないでいただきたいわ![]()
なにも知らなかったわけではないと言えどんどん彼一色に染まってしまうなんて密偵としてこれでいいのかしら?