誰もが黙り込んだ静寂を破るようにライザール様が口を開いた。

 

「その話はもういい・・それより話を戻すがシリーン、昨夜の男が何者かに暗殺されたぞ」

 

――え!?

 

昨夜感じた悪寒が立ち戻る。

 

ライザール様が尋問していたのはあらゆる非合法な売買に携わっていた男だった。

 

――あの男が殺された?誰がなんのために?

 

「心当たりはあるのですか?」

 

仲間による口封じかもしくは復讐されたのかはわからない。

 

「いや・・・だが一撃で命を奪った手際を見てもプロの犯行だろうな」

 

 

「ここは宮廷ですよ?そこまで危険をおかしてあの男を始末する者がいるなんて・・・」

 

いくらなんでもリスクが高すぎた。

 

だが突如思い当ってしまう。ライラ・ヌールが正義を標榜する義賊ならば『彼』は正義を標榜する暗殺者だった。

 

彼といっても定かではなく性別すら不明だったが、おそらく単独犯。

シャナーサだけではなく各国の闇組織を恐怖に陥れている人物だった。

 

「ああ・・・お前も思い至ったのだな。私も『奴』の仕業だと思う。思うが・・・対応が早すぎると思わないか?あの男をとらえたのは昨夜だぞ?尋問の後深夜に犯行に及んだのだろうが

 

・・お前は私と一緒でよかったな」

 

!?

 

二人の視線が私に突き刺さる。