気だるさに包まれながらライザール様の腕の中でまどろむ

 

私は密偵だし状況が大きく変わったわけじゃない。

それでもライザール様が私の名を呼んでくれて愛していると言ってくれたことが嬉しかった。

 

・・・嬉しかったけど

 

でも手放しで喜べないのは今のままでは私達の未来はないこともわかっているから。

 

私は彼の愛人になる気はないし、密偵で踊り子の私が一国の王の妻として相応しい女とはいえないだろう

 

それくらいシャナーサにおいて身分の差は歴然とあった。

身分のない私がライザール様に惹かれ、生まれついての貴族のレイラさまは使用人に惹かれるなんて皮肉ね。

 

愛に溺れてしまえば簡単なことだったけど、冷静になってしまうのは私が彼を失いたくないから。

 

愛だけが私たちを繋いでいるものだけど、それは陽炎みたいに不確かなものだった。

 

――世の中うまくいかないものね

 

そんな不条理に頭を悩ませていると、ライザール様が尋ねた。

 

「なにを考えている?」

 

 

そうでした。ライザール様は常に観察モードの方だけど私の考えを知りたい、わかりたいと思ってくださっているってことよね。

 

「現実と理想についてかしら」

 

それが私の悩みの種だった。

 

「それは随分と深遠なテーマだな。だが私にもよくわかる。先ほどの暗殺者もそうだが、排除しても排除してもいなくなることはない。まったく救いようがない連中だ」

 

 

私は恋愛の悩みだけどライザール様のテーマは一国を憂えるまさに壮大なものだった。自分がいかに平凡で矮小な人間だと思いしらされる。

 

でもそれだけ彼がこの国の闇を払いたいと真剣に取り組んでいるともいえた。