嗚咽をもらす私を前に途方にくれたように立ちすくんでいたライザール様は無言で鞭をしまうと私の手を握り締めた。

 

「へへへ・・・そいつはひでえ男だぜお嬢ちゃん・・・女なら体に聞けってゲス野郎だよ」

 

!!!

 

「黙れ!!貴様!!おい、そいつを黙らせろ」

 

男の暴言に蒼白になったライザール様が衛兵に指示を出す。

 

「吐けっつったり黙れつったりどっちなんだよへへへ」

 

あざ笑う男への怒りを露わにしたがライザール様は否定はしない。

 

痛めつけられた男の妄言かもしれなかったが、たった今見たばかりの光景を思えばあり得ない話ではなかった。

 

私自身幾度なく彼の手管で翻弄されていたこともあって、男の言葉を疑う理由はなかった。

 

だって彼は快感に酔いしれる私を冷静に観察する男だもの。

 

彼が女にそのような尋問をしているのだとしたら理由はどうあれ同じ女としては不快感しかなかった。

 

でもそれだけじゃなくて、やっぱり根底にあるのはまぎれもない嫉妬だった。

 

「どうした・・レイラ?」

 

ライザール様にレイラと呼ばれるたびに心が痛む。

 

自分で引き受けた役割を割り切ることもできないほど私は彼に夢中だったのに今は耐えられそうもなかった。

 

!!

 

――私はレイラじゃないもの!!

 

思わず握られた手を振りほどいてしまう。

手を突き離した瞬間見た彼の顔には私の拒絶が信じられないとでもいうような愕然とした表情が浮かんでいた。

 

 

彼を失望させてしまったことに気づき、いたたまれなくなった私は彼を置き去り走り去った。

 

彼が何か叫んでいたけれど今の私はレイラさまじゃないもの。