残っていた仕事を手際よく片づけた後、待機していた侍女と合流した私は湯を使うために大浴場へと向かった。

 

服を脱ぎ湯で身を清めるとやはりホッとする。つい先ほどライザール様に応接室で抱かれたのが夢みたいだった。

 

不意打ちみたいな情事だったけれど、それでも貪欲なまでに彼を求めてしまった。

 

篭絡するどころか陥落したのは私の方だった。

 

ライザール様の方が私より密偵に向いてらっしゃるかも、とふと思う。

 

手合わせしたことはなかったけれど、常に鞭を携行しているのだしそれなりに腕に覚えがあるのだろうから。

 

そんな私の疑問がすぐに解消されることになる事件が起きたのは滞りなく終えた会食後のことだった。

 

ライザール様の同伴者として大使夫妻と共にライトアップされた庭を散策中のことだった。

 

突然現れた暴漢が怒声を上げライザール様に切りかかろうとしたのだ。

 

どれだけ厳重に警備してても搔い潜り不逞の輩は侵入を試みるのが常だった。

 

私が動くまでもなく決着はすぐについた。

 

落ち着いた所作で鞭を振るったライザール様の前に屈した男はすぐに屈強な衛兵たちにたちどころに捉えられてしまう。

 

男は何事かわめいていたがどうやらライザール様が壊滅させた反社会的な組織の幹部だった者らしい。逆恨みからの犯行だろう。

 

「お騒がせして申し訳ないが、急用ができたのでここで失礼する。レイラ、あとは頼んでも構わないな?」

 

「ええ・・・わかりましたわ、ライザール様お任せください」

 

驚いたことに彼にとっては暗殺未遂騒ぎも日常茶飯事らしい。

 

さすがに大使夫妻はのんびり散策気分でもないようではあったので散策は早々に切り上げ茶でもてなすことにした。

 

それでも取り乱さないのはさすがね。

 

緊張はあったものの厳選した高級茶葉を振舞い大使夫妻と和やかに歓談を終えることができた。