幸いライザール様は条件付きで本の貸し出しを許可してくださった。

 

条件とは彼の部屋から本を持ち出さないことだ。

 

 

私のことは一応一定の信頼はしてくださったようだけど、それでも用心深い彼からしたら本の貸し出しすら油断できないのだろう。

 

たとえばページに毒を仕込むとかね。古典的な方法だけに宮中ならありうる話だった。一見まだるっこしいやり方だけど誰が仕込んだか特定が難しいという利点がある一方、誰が被害を受けるかわからないというデメリットがある方法だった。

 

少なくとも私が王から本を借りる立場であることを知るものが悪用しようと思えばできるので王の身の安全と自分のためにも用心にこしたことはない。

 

毒に関しては私も耐性をつけているし、解毒薬も調合できるけどシャナーサ王家の方はさらに壮絶だった。

 

暗殺対策として幼少期にブラックマンバの毒の洗礼を受けねばならずそのせいで王族が激減したというのだから本末転倒だわ。

 

リスクを考えだしたらきりがないけれど、ライザール様のお部屋を訪ねる口実にもなるし、それに収集した書籍を見ればその人柄も見えてくるため興味深いものだった。

 

どうやらかなり好奇心旺盛の方のようだ。

 

そういえばわが国の経済が盛り返したのも彼が独自に発見に至った主要な特産品の一つであるテロメアーナ鉱石のおかげらしいからその探究心は趣味と実益を兼ねているのだろう。