これまで一度も唇を許したことなどないのに。

ファーストキスの相手が王なんて確かにすごいことだけれど、望んだわけじゃない。

 

「王ならばいくらでもお相手がいるのではないですか?」

 

つい余計な差し出口をしてしまう。

 

しかし嫉妬だとでも感じたのか勘繰る私をうっとうしげにライザール様は睨みつけた。

 

「余計な詮索はしないほうが身のためだ。だがまあいい、今後のことも踏まえてあえて言うが確かに困ってはいないな。だが婚約中だから身辺整理は済ませたから現在相手はいない。だが私を裏切ったあの女に操だてする必要はないだろう?今頃別の男に抱かれているだろうさ。だから私がお前と楽しんでも構わないはずだ、そうだろう?『レイラ』」

 

 

レイラと呼べばなんとでもなると思っているのね。でもそんなのただの八つ当たりだわ。別に私が好きなわけじゃない。

 

ただの慰みものになるなんて考えただけで耐えがたいと思うのにでも裏腹に好奇心が芽生えてしまう。

 

婚約者がいたってお構いなしに女遊びをする男などいくらでもいるだろうけど、彼は少し違うようだ。

 

今は婚約者に裏切られて自棄になっているようだけれど、無理もない。

 

湯の中でたぎる彼を感じてしまって思わず胸が高鳴ってしまった。

 

「どうだ、私が欲しくなったか?」

 

私の葛藤を見抜いたのかライザール様が私の充血した唇を親指でこする。そんなに物欲しげに見えてしまっただろうか?

 

「ん・・・・欲しい・・・です」

 

先ほどの頭がかすむような濃厚なキスで理性が半減していた私は好奇心に負けてしまった。