顔を合わせるのが気まずくても仕事は全うしなければならない以上、気持ちを切り替えることしかできない。
はあ・・本当になにやってるのかしら私・・・前途多難だわ
「『レイラ』お嬢様・・湯冷めしてしまわれますよ。着替えをご用意させていただきました」
気づいたら待機していた侍女が戻っていた。王に遠慮していたのだろう。
いたたまれなかったけれど、動揺はきっちりと押し隠す。
「ええ・・・」
幸いレイラさまの侍女達は事情を御存じだからありがたかったけれど、目下の者を労わないのが宮廷の作法だった。
そう思っていたら侍女が親身な様子で声をかけてきた。
「お嬢様大丈夫でございますよ。無理をしないでくださいまし、私達がかならずお守りいたしますから。・・・王のお相手はお任せください」
!?
それはどういう・・・意味かなど問わずともわかりきっていた。
寝所に侍る相手を婚約者の侍女から物色するなんて!なんて悪趣味なのだろう。
王が所望してもレイラさまが相手をできない諸事情がある時のための身代わりを用意したのもアリ家だった。
見知った侍女に夫を寝取られるなんて
私なら耐えられそうにない。