「ずいぶん大口を叩くな。せっかく見逃してやったものを・・・後悔するなよ?」

 

そう言った彼は酒を勧めようと手を伸ばし、逡巡の後気が変わったのか私の腕を引いて抱き寄せた。

 

どうやら酒の力を借りることはやめたらしいことに安堵する。初体験がへべれけ状態なんてさすがに遠慮したい。

 

イラついていたのが嘘のようにライザール様は優しく抱きよせると先ほどみたいに頬にそっと触れた。

 

トクン

 

これは一夜の欲望でしかないから愛の言葉を交わすこともないのだけれど、それでも彼は精一杯理性的に接してくれたと思う。

 

唇を触れ合わせるようなキスから息が苦しくなるような濃厚なものへと深めながら互いの体を探り合う。

 

大きな掌に撫でられる感触が心地よかった。

 

やがて引き込まれた天蓋付きの彼の寝台はとても広くて数人が寝ても余裕がありそうだった。

 

もし私がここに来なければ行われていたであろう蛮行にまた嫌な気持ちがぶり返しそうになったけれど、考え事はそこまでだった。

 

本格的に私を征服する気になったライザール様はとても熱心だったから、照明が絞られた部屋で服を脱がされる間も次々と押し寄せる快感の波に幾度なく溺れそうになってしまった。

 

「はっ・・・・あっ・・・・」

 

髪を振り乱しながら、私の体を気遣って念入りに愛撫を施すライザール様の髪に指を絡ませて熱い吐息を漏らす。

 

火照った顔を見られたくなくて隠すように両腕を交差させた隙間からうかがった彼の相貌は欲望に染まり、その両目は獲物を狙うオンサのように爛々と輝いていたけれどすっかり魅了されていた私に恐怖はなかった。

 

さすがに彼のすべてを受け入れた時はあまりの衝撃に涙が溢れてしまったけれど、やはり後悔はなかった。

 

互いの両手を組み合わせて、呼吸を重ねて、心音を重ねて幾度なく体を重ねた。

 

最初は遠慮がちだった彼も、いつしか快楽に酔いしれた私に合わせるように激しさを増していった。身体は柔らかい方だからより深く求めあえたと思うわ。