なんて冷たい目。もう私が何を言っても無駄なの?

 

「ほう?私と命を共にすると?そこまでの覚悟があるとはな。だが私とて情の深い婚約者殿を失うのは惜しい。暗殺者が貴女の命を狙わぬとも言い切れない。守るのは私の義務だろう。だから貴女には牢に居ていただく。おい、婚約者殿を牢へご案内しろ。大人しく私の迎えを待つがいい。・・いいな?」

 

 

「わかりました。王命とあらば謹んでお受けします。身の潔白が証立てできない以上私にできるのはそれくらいですから。どうか、ご無事で・・ライザール様」

 

拝礼して視線を交わしたライザール様の双眸には疑念と拭いきれない思慕が入り混じっているようだった。

 

ライザール様の命で衛兵に促された私は牢へと直行することになってしまった。

 

だけど私は抗わずに大人しく従った。

 

後ろ髪をひかれる思いで退室してライザール様のお姿がすっかり見えなくなっても気がかりと不安は拭えなかった。

 

部屋の前で待機していた憂い顔の皇驪様に感謝を込めて目礼して通り過ぎる。

 

もし全てが露見したならば有罪にもなりえる以上、二度とこのままライザール様にも会えないかもしれない。

 

それにジェミルが救出にくる可能性だってあったけど、もう二度と情に流される気はなかった。

 

ライザール様に報いるために決死の覚悟をしていたのだ。