まんまとジェミルに出し抜かれてしまったライザール様は憤懣やる方ない様子で牢へとやってこられた。
「逃げなかったのか。みすみす脱出のチャンスを逃すとは愚かだな」
腕を組み私を見下ろす冷徹なはずの双眸には複雑な色が浮かんでいた。
「私はどこにもいきませんわ。貴方のお傍におりますと言ったでしょう?それに私を「守る」とおしゃったのは貴方です。」
火照る体を抱きしめながらなんとか会話を繋ぐ。二の腕には思わず立てた爪痕から血がにじんでいたし思わず洩れそうになる熱い吐息をこらえる私に注がれるライザール様の双眸は欲望にぎらついていた。
「お願いですから貴方のお傍にこれからも置いてくださいませ。なんでもしますから」
それは今の私にできる精一杯の誘惑だった。
欲望に濡れた私の瞳、熱い吐息を漏らす唇、しどけなく開き投げ出した私の足先まで全身でライザール様を求めていた。
「もうお気づきなのでしょう?私がレイラではないこと。もしそれが許せないならこの命を奪ってくださっても構わないわ」
究極の二択だったけど、ライザール様は躊躇されたようだった。
だけど望まれないなら私は死んだも同然だったから懐から出した小瓶を煽ろうとしたら手首を掴まれてしまう。
小瓶はあっさりと叩き落されて台無しになってしまった。