「よせ!私はお前の本気を判じかねているが、死を選ぶほど思いつめるのならばその身も心も私に捧げるがいい」
言葉は乱暴だったけど、私を抱き寄せたライザール様の腕は優しかった。
そのまま引き寄せられて唇が重なる。それは私にとって初めてのキスだった。
店主様が私にキスを禁じたのが今更ながらわかった気がした。
まるで息吹を吹き込まれた泥人形のような心地だった。
初めて生きていると実感できるほどの衝撃だったのだ。
私の心はその瞬間ライザール様の虜になってしまったみたい。
火照った身体を持て余しながら必死にしがみつくようにキスを交わす。
初めてのキスが地下牢だなんて・・あんまりだったけど・・もう二度と会えないと諦めもあったから感動もひとしおだった。
足元もおぼつかない有様だったけど、ライザール様は軽々と抱き上げて地下牢から二階の彼の寝室まで運んでくださった。
彼はまずは私の二の腕についた傷の手当てをしてくださった。それが不思議なほど違和感なくて追憶の彼方の大切な方を髣髴とさせるものだった。
それに・・この結び方・・懐かしい・・
「ありがとう・・ございます・・・」
思いがけないほど優しい仕草に感動したまま礼を言ったら、ライザール様が苦笑された。
「礼を言うのは早い。これからお前にひどいことをするのだからな。もう我慢も限界だろう?私で良ければその疼きを鎮めてやろう。
どうだ・・?私が欲しいか?」
明らかな欲望を秘めた誘惑だったけど、抗うすべなんてあるわけなかった。
恥ずかしくて言えなかったけど、私だってずっとライザール様に抱かれたかったから。
だからこくりと頷き返したらまたご褒美みたいにキスされた。