何度目かわからないくらい悦楽の時を過ごした後、共に寝台に寝そべりながら言葉を交わした。

 

「私はお前をどうすべきかな。まさか初めてだとは思わなかったが、私は悪くなかっただろう?それともお前が感じやすいのか

・・どっちかな」

 

そんなこと聞かないで欲しい。今更ながら羞恥を感じてしまう。

あんなに乱されたのも、焦らさないでって哀願したのも生まれて初めてですもの。

 

意地悪なのかと思えば優しいし・・本当に憎めない方だわ。

 

「今更照れるな。初対面の私を誘惑したとは思えないほど初心な女だ。だが気に入った。お前を私色に染める楽しみが増えたのだと思えば悪い気はしない。

 

そうだ・・そういえばまだお前の名を聞いていなかったな。名はなんという?」

 

それこそ本当に今更だわ。だけどそうね・・不思議だけどずっと長いこと私を縛っていた暗示はライザール様にキスされた時にすっかり解けてしまったみたい。

 

今ならば私の全てを貴方に伝えることができるわ。そして貴方の真実も暴けるかしら?

 

「・・私はシリーンと申します、ライザール様・・ううん、ルト・・でしょ?」

 

そう尋ねた途端、瞠目された貴方の双眸に映る私の姿は追憶の彼方の少女と重なったかしら?

 

そして私の中でも追憶の彼方のルトと目の前のライザール様がゆっくりと重なって一つになったの。

 

長い歳月を経て変わってしまったこともあるけど変わらないこともあった。

 

それは互いの立場だったり長年募らせた想いだったりいろいろだったけど運命の悪戯で私達はまたこうして巡り合えた。

 

全てを失う覚悟で愛する方の腕の中に飛び込んだ私は記憶を取り戻し、そしてかけがえのない愛も取り戻すことができたようだ。

 

偽物同士で過去に拭えない喪失を抱えていた私達はこうして真実の名の元に結ばれることができたの。