だが王としてやはり疑念を払しょくできない者を放置することはできなかったからちょうど会議に参加されていた皇驪殿に密かに協力依頼することにした。

 

当然のことながら皇驪殿は難色を示した。

あの女を「白娘子」と呼び親しみ、色香に惑っているから無理もない。

 

だが最後は私の意向を汲んでもらえたようだった。

 

「あの方がたとえ婚約者でなかったとしても私は婦女子にそのような無体をすることはやはり気が進みません。ですがことは一国の大事です。いたしかたありませんね」

 

さすが燐帝国の世継ぎだけあり英明な方だ。もっとも己で手を汚さぬ身だからこんなものだろう。

 

だが私は己の手を汚すことも厭わないし、手ぬるいことをするつもりはなかった。

 

あの女がもし一歩でも牢を出れば地獄を見るだろう。待つのは破滅だけだ。

 

皇驪殿の協力を得てその手はずは整えてある。

 

暗殺者の存在も捨て置けなかった。一度目はあの女に邪魔をされ追撃ができなかった。二度目は不意をつかれて後れをとってしまった。

 

忌々しいが奴は凄腕らしい。だが私のテリトリーでこれ以上好き勝手させるわけにはいかなかった。

 

あの女を使えば暗殺者の男をおびき出せるだろう確信があった。

さらにレイラ付きの侍女だった者をあの女の元へと遣わせた。侍女には特殊な工程で加工させた金梅の実を持たせたからあとは侍女がうまくやるだろう。

 

幻の銘酒だけあって他国には出回らないまさに燐帝国の秘蔵酒だけに、あの女が密偵であったとしても耐性はないはずだ。